少し前になりますが(1998年)
プレスの抜き型が割れたので作りなおして
欲しいと依頼を頂いた時のことです。
写真の割れた型は私の父が作った型で、
いっしょに写ってるのは型が割れる前に抜いた品物(一部二次加工あり)です。
父が作って20年以上たち、再び今度は私が
作ることになりました。
当時私は中学生で、すでに仕事を覚える為、
工場を手伝ってましたので父が苦労して
製作したのをよく覚えてます。(設備は旋盤とシェーパー)
現在ならば、それほど難しい型ではないでしょうが、当時(1975年)はワイヤーカット加工がまだかなり高価で、シェーパーと旋盤で仕上げてました。
シェーパーをご存知の方ならお解かりいただけると思いますが、
この型を仕上げるには、バイトから「火造り」で造り、
「シェーパーで突いて」加工しなければなりまん。
「ひづくり」「つく」 この言葉さえほとんど使われなくなりました。
話が通じるか心配ですが、説明は省かせて頂きます。
興味のある方は年配の職人さんにお聞き頂くとなつかしそうに説明して頂けると思います。
正直この依頼を受けるか(私にできるか)迷いまた。
父はすでに引退し、週に1~2回工場をのぞきに来るくらいでしたので私が全て
しなければなりません。
「よしやってみよう」と決心し父に伝えました。
父はわたしの目を見ながら一言「そうか」とだけ言いました。
言い遅れましたが、諸事情によりこの型は私の工場以外で加工するには、
手続きがいるみたいで2回目の依頼の時も外注禁止です。
前回のバイトが残ってるはずもなく、コークスで火をおこし、ハイスを姿バイトに火造り、焼きを入れ何本もバイトを作りました。
加工は、ケガキ線を正(しょう)にし、上型と下型とのギャップをどこも均等に
しなければなりません。
このギャップに少しコツがあるのですが・・・。
型の焼入れは、さすがに焼入れ屋さんに頼みましが、こちらの指定の方法で
入れてもらいました。
ここも少しコツがあります・・・。
やっと型ができ、先方のプレスで試験打ち。OKです。うれしかったです。
すぐに父に報告するとまた一言「そうか」だけでした。
後で妻に聞いたのですが父は内心、私に出来るか心配してたらしく、
「これであいつも大丈夫や」と言ったらしいです。
どうりでこの型を作ってるときは、よく工場に来てたと思ってたら、
無言で現場監督してたみたいです。
長くなりましたが、このような昔の技術も今の技術と組み合わせることにより、
一層深くできると思います。
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